ネット右翼の生みの親

戦争論』という漫画を知っているだろうか?

この漫画は、元々はおぼっちゃまくんという下ネタ満載のくだらないマンガを描いていた小林よしのり氏が描いた漫画で第二次世界大戦での日本軍の戦争犯罪について世論を切ったマンガである。

私は、戦争論は軽くしか読んでいないが、スピンオフ作品が他にもたくさん出ていて、その中の靖国論を読んだ記憶がある。

戦後の日本では、大日本帝国の暴走で日本は、中国韓国にひどいことをしたから謝罪と賠償を行うべきだという論調がテレビ、新聞、雑誌で支配的になる中、小林よしのり氏が独自で調査や資料解釈などを行ってそれをマンガにした問題作である。

そのため小林氏は当初は国内外のメディア、知識人から多くの批判を浴びていた。しかしインターネット上ではそうしたメディア、知識人の言説を苦々しく思っていた保守派の間で徐々に主張が浸透し、2014年には従軍慰安婦問題の捏造を朝日新聞が正式に謝罪したことなどから日本人の世論も大きく変わり、延々と続く謝罪と賠償による戦後外交を終わらせるべきであるといった考えが国民の間に広がった。

インターネット上で中国や、韓国に対してヘイトスピーチを行ったり、ヘイトを煽る様なデマを流すネット右翼が社会問題となっているが、小林よしのり氏の戦争論が原因となったと主張する人がいるらしい。

確かに小林氏のマンガは風刺画のように戦後の政治家を痛烈に皮肉り、醜悪な姿で描いていたりする。マンガとは思えないほどの文字量で強烈なメッセージを大量に読者に浴びせてくるのでインパクトがある。その文章も時に論理的で時に感情に強く訴えかけてくる。

このマンガを読んだ読者はある人は生理的に受け付けないだろうし、ある人はかつての日本人の美徳であったり、現代人が失った大切な何かに気づく。一方、実在する特定の政治家、国、民族が凶悪に描かれているため過度にそれらの人物や国に対して悪感情を抱き自分が正義であると思い込んでしまうこともある。

私自身、中学生から大学生にかけては、中国韓国の歴史に興味があったが近代以降の中国韓国に対しては過剰に敵視したりする部分があった。

中学生や、高校生の時は、中国韓国が日本の領土を不法占拠していることから我々の安全を脅かすのではないかという不安を感じたことがある。

第二次世界大戦は経験者が現在でも多く生存しており、いろんな人の思いや考えが交錯しやすい。

小林よしのり氏の著作は参考になる部分はあるが、毒にも薬にもなる分、読む時期や読む人の資質を選ぶ本であると考える。

ドラゴン桜エンゼルバンク、インベスターZなどで有名な三田紀房氏などにも言えることだが他のマンガ家がなかなかリーチできない分野についてマンガにして書き続ける。

これは経営学的に競合が少ない分野での成功を目指す戦略であるブルーオーシャン戦略に通じるものがあるのではないかと思う。

スポーツや、アクション、ファンタジーなどのマンガは競争が激しく、ストーリ―と画力、両方がそろわなければ成功は難しい。

しかし、彼らが扱う受験、進学、政治、投資などは各人の人生にかなり大きな影響を与える分、普通のマンガ家はリスクを恐れてなかなか手を出したがらないだろう。

しかし彼らはそれをやってのけられるのは読書や、自己研鑽を通じて得た知識に加えて、みんなと違うことをする勇気なのだろう。

小林氏は商業高校の出身で、先生に「小林は大学に行って本を読め」といわれ、最初は反発していたそうだが、福岡大学に進学するとその通りにやっていたそうだ。

歴史、文学、思想などのジャンルを読み漁ったらしく、それらをマンガを通じてずっとアウトプットしている彼の知見は見るべき点はある。

正直私自身、眉を顰めたくなるような内容もたくさんあるが、こういう考えもあると割り切って読める人には一読の価値があると思う。