救世主大戸屋

少し前に、各週刊誌が取り沙汰していた大手外食チェーンを多く傘下に収めるコロワイドグループのが大戸屋HDに対して敵対的買収を仕掛けるという出来事があった。

そして12月4日付の記事によるとまた新たな動きがあったようだ。

maonline.jp

 

 これによると大戸屋は今期に債務超過陥っており、債務超過解消のために、第三者割当増資、公募増資のどちらかに踏み切るのではないかと言われている。

三者割当増資の意味は以下の通りである。

会社の資金調達方法の一つであり、株主であるか否かを問わず、特定の第三者に新株を引き受ける権利を与えておこなう増資のこと。株式を引き受ける申し込みをした者に対しては、新株もしくは会社が処分する自己株式が割り当てられる。第三者割当増資は、会社の株主資本を充実させ、財務内容を健全化させる。 

出典:https://www.nomura.co.jp/terms/ka_index.html

 公募増資については、以下の通りである

 公募増資とは、新しい株式を発行するに当たり、不特定かつ多数の投資家に対して取得の申し込みを勧誘すること。公募増資の目的は、設備投資などの資金を広く一般投資家から集めるためで、それと同時に、株主層の拡大や株式の流通量の増加というメリットもあります。公募増資の際の価格は通常、時価に近い多少割安な水準に決められて、既存株主の利益を損なわないように配慮されています。

出典

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ko/J0332.html#:~:text=%E5%85%AC%E5%8B%9F%E5%A2%97%E8%B3%87%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84,%E5%A2%97%E5%8A%A0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 親会社であるコロワイドは、焼き肉屋、回転ずしといった宴会などの非日常食の飲食店チェーンを多く抱えているがコロナの影響で収益力が大きく低下していることから日常のランチや、夕食で普段使いされることの多い大戸屋を急いで傘下に収めグループの稼ぎ頭に早くなってほしいと思っている。子会社の企業価値を向上させることは、親会社の企業価値を向上させることに繋がる。

にも拘らず大戸屋債務超過であり、理論的には企業価値はゼロになってしまい、株価もそれによってゼロになってしまう。下の図の株式価値の部分を株式数で割ると株価になる。

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出典https://str.co.jp/merger-and-acquisition/enterprise-value-and-stock-value



コロワイドグループは、何としても大戸屋債務超過を解消したいと考えるはずなのになぜ増資を行わないのであろうと考えた。

 

そうであれば、コロワイドグループ内の子会社が第三者割当増資を引き受ければ良いと考えるかもしれません。しかし、どの子会社もコロナ禍を乗り越えるために必死です。

「カッパ寿司」のカッパ・クリエイト<7421>の2021年3月期第2四半期の純損失は18億6,800万円。純資産額は102億1,200万円です。「ステーキ宮」などを運営するアトム<7412>の2021年第2四半期の純損失は9億8,400万円で、純資産額は113億4,800万円です。両社ともに自己資本にはまだ厚みがあるものの、赤字はこの先も継続する見込みであり、長引くコロナ禍での退店や業態転換のクッションとなる自己資本を薄くしたくはないはずです。本体のコロワイドも2021年3月期第2四半期で57億8,800万円の純損失を計上しており、純資産額は295億8,000万円。自己資本比率は11%で、業界の平均的な水準といわれる14%を下回りました。

加えて、敵対的TOBで焦点となっていた大戸屋の経営陣刷新にコロワイドは成功しており、これ以上グループ全体での保有比率を高めることにはあまり意味がありません。これがポイントの3つ目。グループで大戸屋第三者割当増資を引き受けるインセンティブが低い状態なのです。

 なるほどどの子会社も大きな損失を出しており、純資産に対するインパクトは大きいため、どの子会社も増資してほしいはずである。そうすれば我も我もと増資を求め大戸屋だけ特別扱いをするとなるとグループ内での不協和音が生じる恐れがある。

それで親会社コロワイドによる増資は行われる見込みは薄いということだ。

今回は無議決権の株式のみを発行する前代未聞の株式発行となる。これは増資によって経営基盤を強化したいが議決権行使をコロワイドグループの第三者に認めてしまえばコロワイドのよる支配が喪失してしまう。実際コロワイド大戸屋に対する議決権は46.77%と過半数獲得に至っていない。

それを阻止するためにこのような特殊な形でおこなわれたのだと考えられる。

コロワイドグループの飲食店経営のノウハウが大戸屋にいい影響をもたらし、また大戸屋がグループを牽引するブランドになる。これが今となっては理想的な形なのではないかと思う。