スシローVSくら寿司

M&Aonlineというメディアを知っているであろうか?

その名の通り、企業のM&Aすなわち買収と合併などの情報を載せたものであるが、週刊新着記事のランキング一位に回転寿司チェーンの大手二社である「くら寿司」と「スシロー」の2社を比較する記事が載っている。

https://maonline.jp/articles/sushiro_kurasushi20201205

同記事によると、

 

スシローグローバルホールディングス(HD)<3563>と、くら寿司<2695>の回転寿司大手2社の決算が出そろい、両社の業績に明暗がくっきりと表れた。

くら寿司が当期赤字に転落したのに対し、スシローグローバルHDは減益ながら営業、税引き前、当期の全段階で黒字を確保した。今期の業績見通しも、くら寿司新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「未定」としたのに対し、スシローグローバルHDは利益の全段階で前年度比40%-60%もの増益を見込む。何が両社の明暗を分けたのだろうか。

 つまり業績を伸ばしたのはスシローで、来年度も好業績が見込めるのに対して、くら寿司は赤字に転落して、先も見通せないとしている。

実際に今期の業績はどうだったのであろうか?

再び引用してみようと思う

 

大きな違いが生じるのは損益。スシローグローバルHDの2020年9月期は、営業利益が120億6100万円(前年度比17.1%減)、税引き前利益が105億3600万円(同26.6%減)、当期利益が64億5700万円(同35.2%減)と、いずれも2、30%の減益となった。

一方のくら寿司の2020年10月期は、営業利益が3億5000万円(同93.6%減)、経常利益が11億3500万円(同81.5%減)と8、90%の大幅減益となった。さらに当期損益は2億6200万円の赤字に転落した。

 スシローグローバルHDは9月決算、くら寿司は10月決算、ホームページをみるとまだ有価証券報告書は出ていない様子なのでおそらく速報値を表した決算短信の数値を引用しているのであろう。

www.sushiroglobalholdings.com

www.kurasushi.co.jp

それぞれ2020年9月期、10月期の短信を見てもらえれば分かるが売上収益と、営業利益、経常利益、当期純利益の差は2社で歴然とした差が出ている。

記事によると2社の差は売上による収益ではなく、販管費であるとしている

 

シローグローバルHDの2020年9月期の売上高は2049億5700万円で、前年度比2.9%の増収となった。くら寿司の2020年10月期の売上高は前年度比0.2%減の1358億3500万円でほぼ前年並みとなった。

コロナ禍で売り上げが大きく落ち込む企業が多い中、国民食ともいえる寿司を扱う両社だけに、ともに消費者の支持はしっかりと獲得しているようだ。

大きな違いが生じるのは損益。スシローグローバルHDの2020年9月期は、営業利益が120億6100万円(前年度比17.1%減)、税引き前利益が105億3600万円(同26.6%減)、当期利益が64億5700万円(同35.2%減)と、いずれも2、30%の減益となった。

一方のくら寿司の2020年10月期は、営業利益が3億5000万円(同93.6%減)、経常利益が11億3500万円(同81.5%減)と8、90%の大幅減益となった。さらに当期損益は2億6200万円の赤字に転落した。

両社の損益計算書を見ると、寿司ネタなどの商品を仕入れる際にかかる費用である売上原価率はさほど変わらず、粗利益率はスシローグローバルHDの52.6%に対し、くら寿司は55.2%。この段階ではくら寿司の方が、わずかだがスシローグローバルHDよりも儲かっていることが分かる。

ポイントは販売費と一般管理費のいわゆる販管費。販売費は寿司を販売するのにかかった費用で、店員の給与や、広告宣伝費、運送費などが含まれ、一般管理費には会社全体を管理するのに必要な役員報酬や管理部門の給与、通信費などが含まれる。

売上高に占める販管費の割合を見ると、スシローグローバルHDの46.1%に対し、くら寿司は54.9%と8.8ポイントも高い。粗利益から販管費などを差し引いた残りが営業利益であり、販管費の多寡によって利益に大きな差が生じていることが分かる。

 なるほど数字だけ見ればこの見立ては正しいのかもしれない。問題は同じ業態の2社でなぜこれだけ販管費に差が出たのかが論点になる。

直感的には、商品の標準化が進んだ回転寿司チェーンで店員の給料や、広告宣伝費、商品の原価に差が出るポイントはなかなか見つけることは難しいと思う。

そこで両社のIR情報などから、その理由を探ろうと考えた。

一つはくら寿司は海外の地域別の情報を見ると日本、米国、台湾を中心に展開しており、アメリカでは昨年8月に子会社を上場させ、台湾では今年9月に子会社を上場させている。日本と台湾では利益を出しているのに対し、米国では大きな赤字を出している。これはアメリカでのコロナの感染者や、死者が他国とは桁外れであったことが原因であると考えられる。一応国別のコロナの感染者数、死者数を掲載しておく、

www3.nhk.or.jp

 もう死者数の桁が一桁も二けたも違うので、コロナによる影響が大きく見通しが立たないとした原因はこの辺りにあるのではないかと僕は思う。

一方のスシローは、台湾、韓国、香港、シンガポールなどのアジアを中心に海外展開している。これらの国々ではアメリカやヨーロッパほど感染による被害は少ないためコロナによる影響は比較的限定的と考えられる。

こうした海外展開の違いが一時的な差になったのではないかと僕は推測している。

現代の日本では個人の自由が広く認められ、かつてのような子だくさんの家庭を増やすことは現実的ではなく、外国人を日本のファンにすることが日本の文化、経済、社会を発展させる一番の近道であると考えているので是非回転ずしチェーン大手2社にはその役割の一端を担ってほしいと願うばかりである。